Last Updated on 2025年12月17日 by 副業おじさん
こんにちは、副業おじさんです。
今回は、私が過去に経験した副業の中でも、最も「割に合わなかった」仕事についてお話しします。
それは、皆さんの家のポストにも毎日入ってくるチラシを配る「ポスティング」です。
求人広告には、こんな甘い言葉が並んでいました。
- 「運動不足解消! ダイエットもできて一石二鳥!」
- 「自分のペースで働ける! 時給1,000円以上も可能!」
当時、会社員としての運動不足を気にしていた私は、「散歩がてらお金がもらえるなら最高じゃないか」と、軽い気持ちで応募しました。
しかし、現実は違いました。 そこにあったのは、爽やかな汗などではなく、「GPSによる常時監視」と「時給150円の絶望」でした。
「個人事業主」という名の奴隷契約
面接に行くと、まず最初に担当者からこう告げられました。
「あなたはアルバイト(雇用)ではなく、『個人事業主』として契約していただきます」
ん? どういうことだ? と思いましたが、要するにこういうことです。
会社はあくまで仕事を斡旋するだけで、配る私は独立した事業主。
つまり、「労働基準法」は適用されません。
最低賃金の保証もなければ、労災も出ない。
事故っても全て自己責任。
会社側にとっては、最高のコストカットです。
配るのが遅い人に時給を払っていたらビジネスが成り立たないため、リスクを全て私たち「個人事業主」に押し付けているのです。
自由なはずなのに「GPS監視」
「個人事業主なら、自分のペースで自由にできるのかな?」 そう思った私に手渡されたのは、GPS発信機でした。
担当者:「ちゃんと配っているか確認するため、常にこれを持っていてください」
建前としては、「チラシを捨ててしまう不正を防ぐため」らしいのですが、実態は完全な監視です。
ルートを外れたり、動きが止まったりすると、会社から連絡が来ます。
「独立した事業主」と言いながら、実際はGPSで首輪をつけられた管理下にある。
この矛盾に気づいたとき、背筋が寒くなりました。
「時給1,000円」の残酷な計算式
報酬は完全出来高制で、当時の単価はチラシ1枚あたり「2.5円」でした。
求人広告にあった「時給1,000円」を稼ぐためには、1時間で何枚配ればいいのか計算してみましょう。
- 1,000円 ÷ 2.5円 = 400枚
1時間は3600秒です。
つまり、「9秒に1枚」のペースで配り続けなければなりません。
想像してみてください。
分厚くて重いチラシの束を抱え、ポストを探し、投函し、次の家へ移動する。
これを9秒で? 大きな集合住宅で、ポストが壁一面に並んでいる場所なら可能かもしれません。
しかし、私が担当したエリアは、庭付きの一戸建てが並ぶ閑静な住宅街でした。
実際にやってみた結果:時給150円
「散歩がてら」なんて甘い考えで、ふんふんと鼻歌交じりに配ってみました。
一戸建てのポストまで歩き、入れ、また次の家へ。
1時間後、配れたのはせいぜい60枚でした。
報酬計算をしてみましょう。
- 60枚 × 2.5円 = 150円
時給150円です。
自動販売機のペットボトル1本分です。
1時間汗だくになって歩き回って、得られた対価がこれです。
「いや、慣れればもっと早くなるはずだ」と思い、走ってみたりもしましたが、それでも時給換算で300円〜400円が限界でした。
これを「副業」と呼んでいいのでしょうか?
これはもはやボランティアです。
ベテランが見せた「命がけ」の裏技
そんな過酷な現場にも、ノルマを達成するベテランがいました。
研修中、先輩が見せてくれた「時給1,000円を超えるための技術」。
それは衝撃的なものでした。
彼は原付バイクにまたがり、エンジンをかけたまま歩道を爆走。
右手でハンドルを握り、かごには大量のチラシ。
減速することなく、走行しながら左手で家のポストにチラシをねじ込んでいくのです。
私:「それ、危なくないですか? 道路交通法的に……」
彼は笑って言いました。
「こうでもしないと、家族を養える額にはならないんだよ」
と。
もちろん違法です。
事故を起こせば一発アウト。
しかし、会社は「個人事業主の自己責任」として見て見ぬ振りをします。
命と免許証をリスクに晒して、ようやく最低賃金レベルの稼ぎになる。
それがポスティングのリアルでした。
Tさんの悲劇:年収600万を捨てた男の末路
現場で出会った、ある男性(Tさん・40代半ば)の話が忘れられません。
Tさんは元々、某有名企業でルート配送をしており、年収600万円を稼ぐエリートでした。
しかし、「自分の人生はこのままでいいのか」「会社に縛られたくない」と一念発起し、家族の反対を押し切って退職。
「独立」を目指したものの、事業はうまくいかず、再就職も年齢の壁に阻まれました。
そして行き着いたのが、このポスティングでした。
「1日6,000枚配らないと、生活できないんだ」
かつてのエリート社員が、今はボロボロの服で、原付を乗り回して必死にチラシを配っている。
家族を養うために、なりふり構わず、GPSに監視されながら走り続けるTさんの背中。
「こんな割に合わない仕事、早く辞めたい。でも、辞めたら明日から食っていけない」
その言葉を聞いたとき、私は恐怖で震えました。
「会社員」という看板を失い、特別なスキルも持たずに「肉体」だけで勝負する世界がいかに残酷か。Tさんは身を持って教えてくれました。
結論:おじさんが「足」で稼いではいけない
私は1日で音を上げ、4,000枚のノルマを一度も達成することなく辞めました。 (配りきれなかったチラシを会社に戻したとき、担当者から舌打ちされたのを覚えています)
この体験から学んだことは一つです。
「おじさんの副業は、『足』ではなく『頭』を使わなければならない」
ポスティングは、「誰でもできる」仕事です。 誰でもできる仕事は、買い叩かれます。
そして、体力のある若者や、Tさんのように命がけでやる人には絶対に勝てません。
もしあなたが、「散歩ついでに稼ごう」なんて考えているなら、今すぐその考えを捨ててください。
時給150円のために、あなたの貴重な休日をドブに捨てることになります。




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